ルートプラスポットを1年使ってわかったメリットとデメリット【オテロイ・チタノタ・オアハカ】
- 2025.05.05
- 園芸
こんにちは!よしのぶです
去年このブログでルートプラスポットを紹介し、自宅と店舗の植物の大半をこの鉢で管理するようになってそろそろ1年が経ちます。
そこで今回はこのルートプラスポットを1年使ってみた経験から学んだメリット・デメリットについて解説していくと共に、オテロイの育成と鉢選びのポイントについて語っていきたいとおもいます
ちょうど鉢増しの季節ですし、植え替え予定の方は是非ご参考ください
ルートプラスポットの使用環境
まずはじめに、僕自身がオテロイの育成環境で使用しているルートプラスポットについて簡単に説明すると、
ルートプラスポットミニ1.5L(5号鉢)
ルートプラスポットミニ3L(6号鉢)
ルートプラスポット7.5L(7号鉢)
ルートプラスポット12L(8号鉢)
以上の4サイズを全てホワイトで、屋外雨晒し・屋外雨除けアリ遮光アリ・屋外雨除けアリ遮光ナシ・室内LED環境の4箇所に分けて計80株以上でテストしました。
使用した用土は全て当店で販売中のオリジナル用土YOBS/001です
もちろん上記4サイズのルートプラスポットも全て当店で販売中のものになります
注意事項としてこの内7号と8号のサイズに関しては室内環境で1株に対しLEDが2灯以上要求されるため十分な株数でテストすることができていません。
つまり5号と6号サイズは室内LEDと屋外雨晒し・屋外雨除けアリ遮光アリ・屋外雨除けアリ遮光ナシの4パターン全てである程度の株数をテストできたけど、
7号と8号サイズは屋外雨晒し・屋外雨除けアリ遮光アリ・屋外雨除けアリ遮光ナシの実質3パターンしか確認できませんでした。
ちなみに屋外管理の株に関しては全て冬の間も加温なしです
雨除けアリ遮光ナシ環境で使用しているガラス温室も本来ついているガラス扉を外してから真冬もフルオープンで使用していました
1年間使ってみた結果
次にこれらの試験環境で実際にオテロイを育成したみた結果について、
結論から言うと最高でした。
一例を挙げるとこのルートプラスポットミニ3L(6号鉢)で1年管理した実生株に関しては、
毛細根までバランスよく発達した後、外向きに沿っていたトップが内巻きに変化しつつ短葉化することで草姿が整い、
サイドの鋸歯が長く発達して実生らしくオリジナリティのある株へと成長しました。
こっちは別の実生で、同じ6号鉢管理から更に鋸歯幅が太く発達しつつ毎月1枚のペースで新しい葉が展開しています。
直径20cm超えたところから更に目に見える形で鋸歯が発達してくるのが実生のポテンシャルであり面白さ
この屋外管理株は横からの撮影動画なので1段ごとに鋸歯幅が厚くなっていく過程がわかりやすいですね
中心部を見てわかる通り5月上旬のこの時期でも屋外で月1枚ペースで葉が展開していて、そろそろ7号へと鉢増しすべきタイミングが近づいている状態です。
以上の点から室内でも屋外でも、雨晒しでも遮光の有無にも関わらずとにかくルートプラスポットが圧倒的にNo.1
最高の結果を得ることができました。
メリット
というわけで最高な結果から逆算して考えられるルートプラスポットのメリットについて少し詳しく解説しましょう
流石に1年という時間をかけて更に屋外温室2セット準備するコストを費やして、「なんか体感良い感じに株が育った気がする!最高!」で終わるのは勿体ないですからね
根の生育が最高
これに関してはぶっちゃけ1年前からわかってました
すでに前回のブログでも根の生育が他社製品と比較して圧倒的に優れている点をアドバンテージとして挙げているし、このルートプラスポットを国内で展開されてる(株)南栄工業から製品担当の方にも直接何度か店舗まで来てもらって
提携農園や大学研究室等の研究機関で試験したデータを画像と論文で見せてもらい、
品種別で「それぞれの植物をどの鉢で育てたときの根の生育状況がどの画像」というような具体的なデータを数万株の実験結果とセットで確認できていました。
そのデータの中でルートプラスポットの比較としてA社のA鉢、B社のB鉢が使用されており、
A鉢B鉢ともにそれまで自宅で使用していたのと同製品で「実際の根の写真を見ても確かにこの鉢で育てたらうちでもこんな感じの根になったな」という個人の体験と論文内で示されたデータがリンクしたため、
ある程度の再現性は担保できるだろうという判断の元ルートプラスポットを計200鉢導入して今回の自店舗環境での試験実施に至った次第です。
なので根の生育に関する心配は最初から1mmもしておらず、今回の試験で不安だったのは
根の生育が葉や鋸歯とどこまで相関するのかのただ1点
もし万が一「根は最高の状態にもっていけたけど、葉が展開するたびに鋸歯は弱くなる」という状況が起こり得るなら本末転倒ですからね
そしてその検証を更にもう1歩進めるため
オアハカ現地珠や現地実生の大きめのサイズを50株ほど用意しました
現地珠を発根管理から始めた経験がある人ならご存知の通り、これら現地珠や大きめの現地実生は鋸歯が厚い状態で輸入しても基本的には展開の度に鋸歯は弱まります
つまり、
これから鋸歯が弱くなる予定の未発根オアハカを使って
発根管理の段階から根を制御する過程を通して根と葉と鋸歯の相関を調べ
最終的に根に対するアプローチから鋸歯が強いオアハカをそのまま強棘キープする手法を確立できたら検証成功
という完璧な流れです。
完璧な検証フローとただ一つの欠点
まぁ大体皆さん理解されてるかと思うんですが、
「一目瞭然なレベルで鋸歯が厚いオアハカ」ってまじで高いんですよね。
この検証のために使った屋外温室はコンクリの基礎工事からガレージ用のポリカ屋根施工まで全て業者に発注したものですし、
井戸を掘るために不動産を一戸解体してるし、電動ポンプの取り付けと井戸の採掘作業も業者頼りなんですが、
それら不動産を買ったり解体したりまたガレージ建てたり井戸作ったりという諸々の工事費用が誤差の範疇まで吹き飛んでしまう程度には膨大な費用がかかりました
つまり知人にオアハカまで飛んでもらって現地から動画を送ってもらい、
数千株の中から1株ずつ明らかに鋸歯の違いを目視できるものだけを選別した時点で白目剥いちゃうぐらいの予算オーバーだったので半分は輸入した段階ですでに販売済み!!本当は50株全部自社で育てて完璧な状態で2世代目と3世代目の子株を育成比較したかったのに!!!
1つだけ言い訳したいのは、一昨年台湾まで自分で直接いってナーセリーと趣味家巡りツアーを行ったときの予算感で50株ならこのくらいでしょみたいな数字で考えてたラインから倍近く超えてきてオアハカインフレの圧を実感しました。
なので残念ながら根と鋸歯の相関についての検証の方は半分のデータしか自分の手元にありません
20数株を室内・屋外で分けて管理してみて、
確かに根の生育が質・量ともに良かった個体に関しては全て葉と鋸歯のバランスも継続ないしは改善できてるけど
ただ輸入時と1年経過時点を比較して明らかに鋸歯が良くなってると断言できる株数をカウントしたら15-18cmサイズで3株、それ以上の大株で3株っていう
「輸入段階でそこまでシビアに選抜してるならせめて過半数は圧倒的に大化けしていて欲しかった」っていう期待からするとなんとも微妙な結果に終わってしまったので、そこは2年目の成長に賭けて引き続き検証続けていこうとおもいます。
ここまでの結果をまとめると
1.根の成長(質・量・速度)について全ての評価項目でルートプラスポットが圧倒的No.1
2. 根と鋸歯の相関についてはデータ不足で現状の相関係数は不明。要経過観察。
3.オアハカの鋸歯が弱る現象についてのみ言及するなら、ある程度は根の制御によって抑制可能。
その他のメリット
というわけでオテロイ育成のための鉢選びで最重要なポイントについては上記で語った通りで
ここから先はその他のメリットについてこの1年で気付いた点を列挙していきます。
まず植え替えでの快適性が凄すぎる
6号鉢から大きくはみ出た20cmオーバーのオテロイを引き抜くのに片手でスマホ構えたまま10秒かかりません
既に今季50株以上植え替えてますけど例年に比べて作業スピードが数倍速いです
あとは5号鉢サイズについてはトレーを使った一括管理が室内でも屋外でもかなり有用だと感じました
使用したのはお馴染みの深型正角トレー16インチ(435×435×52mm)
43.5cm四方のトレーに対してきっちりルートプラスポットミニ1.5Lが3×3列で並ぶので管理しやすく、
仮に最上段のトレーがなかったと仮定したら奥の列を定期的に成長点チェックして虫が入ってないかを確認する手間が増えるのでそのうち虫チェックがめんどくさくなってダニが湧きます。
更に室内管理の場合だと部屋で殺虫剤を撒くのは絶対NGなので一旦外に移動して殺虫するわけですけど、
5号鉢×9になるとプラ製のトレーでは底面が歪んでまともに運用できないのでアルミ製のトレーがマスト
そしてこれはメリットというよりもオテロイ育成にとっては最早なくてはならない必須項目【高さ調整】機能
他のどの鉢を使用する場合に於いても「結局鉢底石で調整すれば土の内容量は可変なのでは?」とスルーされがちなこの機能ではありますが、まず鉢底石は普通にサークリング発生の大きな要因なので非推奨です。
これは国内最大手のスリット鉢の製造元である兼弥産業の公式でもはっきりと明言されています。鉢底石はNG
というわけで残った選択肢は普通のプラ鉢をハサミで切って深さ調節するかルートプラスポットの底板を動かすかの2択
鉢の内容量はオテロイの育成方針を決定する上で最も重要と言っていいほど大事な要素で
仮に灌水頻度や光量・風量とCO2濃度までを完全にコントロールできたとしても鉢がでかすぎたらどうやっても伸びる品種がほとんど
特にベアルート株にとっては直径20cm前後の個体であってもプレステラ120ですら内容量が大きすぎる場合が多々あるため鉢のサイズ選びには細心の注意を払いましょう。
1.10秒植え替え
2.一括トレー管理で防虫・殺虫
3.内容量の調節機能がなにより大事
以上がメリットまとめ
デメリット
デメリットがなかったら100点満点なんだけど、ルートプラスポットに点数をつけるなら92点。
つまり8点分のデメリットがあります。ちなみに菊鉢は44点。
まず底板からちょこちょこ土が溢れます
YOBS/001の場合は籾殻も配合してますので籾殻が溢れやすいです
ただプレステラも普通に土は溢れるし結局どの鉢で管理しててもトレーは1シーズンに一回洗うので手間は一緒
溢れる量はプレステラ以上スリット鉢未満って感じなのでトレーはあったほうがいい
そんな些細な土溢れ問題よりも改めてこの画像を見てわかる通り、6号でちょっと高いぐらいのサイズ感だったのが7号でやけくそに高くなるのが一番のネック
6号鉢で高さ19cmなのはまぁ許容できるとして、7号鉢で急に25cmまでいくとどう頑張っても同じラックの段に並べたときライトからの照射距離が6cm変わってしまい流石にバランス崩します
というか5号鉢→6号鉢の高さの差が4cmなのに6→7号で急に6cm高くなって、
なぜか7号鉢と8号鉢の高さが全く同じなのは設計者の正気を疑うレベルの暴挙
7号鉢外径23cmという一般的な室内用メタルラック(45×90cm)に1段あたりジャスト8鉢積める室内管理の限界サイズは近い将来日本中のLEDアガベおじさんの標準装備になるはずの神アイテムなのに、
高さが6号鉢から6cm変わるというこの1点のデメリットが大きすぎてあまりにも不便です。
逆に考えれば7号鉢と8号鉢の高さが変わらないということは室内ラックの同じ段に7号と8号を両方おいてもライトの照射距離が一定で扱いやすいっていうことではあるんですが8号になると外径28.5cmで完全に屋外専用サイズ
うちも10株以上ルートプラスポットの8号を使ってますがどうがんばっても室内には入りません。
7号サイズの【室内向けに扱えるギリギリの外径サイズ】+【高さだけがどう考えても屋外向け仕様】という規格だけが大幅な減点要素だと感じました。
おまけ
去年から鉢植えで100株以上のオテロイを屋外で育成してみて、
・梅雨でジュレって溶けやすい品種
・0℃で腐る品種
・0℃ではギリ腐らないんだけどそのタイミングで雨が2日続くと腐る品種
みたいな品種別での環境に対する強さを細かくチェックすることができました
主には寒さ・暑さ・蒸れ・乾燥に対する耐性で、もちろん全てグラデーションなので雨除けすればOKとか風すら無理みたいな細かい条件がそれぞれの個体によって変わるんだけど
中でも「この品種は20株全部外に出して屋外雨晒しで梅雨と真冬にどれだけ雨が毎日続いても20株中20株全部が余裕で生き残った上にしかも形も綺麗で崩れない」という強靭な品種がいくつか見つかったので、
それらを来季の庭(できればドライガーデンにしたいけど庭石の調達に苦戦中)で地植えに使うためルートプラスポットのプランタースタンドで少しずつ慣らし運転を始めています。
一応このプランタースタンドに関しては当店でも取扱中の商品のため店舗に実機あり
地植え環境に慣らしたいのに何故通常のプランターじゃなくてスタンドタイプを採用したのかっていう点については一応理由が2点あります
理由1:作業性
もう座って作業し続けるのがしんどいのである程度の高さは欲しい。
もう来季には1品種ごとに30株ずつ子株採れる勢いでオテロイ栽培しまくっていて1株ずつ発根管理するのも実質的に不可能で、そうなると抜いた子株をその場でプランタースタンドに挿していく方式が良さそう
数百株を管理する手間を効率化するなら植え替えが片手10秒で済むルートプラスポットを使って時短で子株を引き抜いてそのままルートプラスのプランタースタンドに突っ込むのが一番速いのでは?!
というわけで将来的に子株の植え込み作業を効率化するために作業性を重視してのスタンド式採用
理由2:ナメクジ
実は普通のプランターは去年実生で種まくのに使ってたんですが、毎晩ナメクジが湧いてとんでもなく不快でした
屋外温室のほうはナメクジの被害がなかったので、プランターも高さがあればそんなに登ってこないのではないかと予想してスタンド式を試してみることに
耐ナメクジ性能に関しては梅雨入りしてみないと具体的な効果は見えないのですが、今のところ普通に成長点が見やすい高さにあるのでダニが入ってないかの視認性が高くて助かってます。
あと一応ベランダ栽培で利用するケースを考えたら通常の床置きプランターだと陽があたらない場合が多々あるので、ベランダやバルコニーに近い高さでプランターを使えて太陽光を当てやすいのもメリットの1つと言えるでしょう
まとめ
というわけでルートプラスポット1年使ってみた感想とスタンド式プランターの紹介でした。
改めてルートプラスポット+YOBS/001なら室内LED環境でガチガチに灌水や温度・湿度までコントロールした状況でも屋外雨晒しでハードに変化する環境でも他の製品と比較してオテロイ育成の面で圧倒的に優位という結果が得られたことに安心してます
通気性の低い鉢だと雨晒しのオテロイ計8株が越冬中に腐って廃棄処分になったのに対しルートプラスポットでは廃棄0(※8株中5株はオテロイ系ハイブリッドと夕映みたいな季節斑が入る血統)
室内でも屋外でも根の生育面では期待した通りの効果が得られたので、これから先は引き続き根と鋸歯の相関についての検証を続けていく予定です
あとは地植えに合わせて土壌調査と最適な微生物資材の配合を探している段階なので、もし良い感じの庭石が調達できてオテロイドライガーデンが作れたらまたブログで報告したいとおもいます。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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