オテロイの育成に役立つ鉢の話

オテロイの育成に役立つ鉢の話

こんにちは!

前回の記事で用土の配合について投稿し、そのオリジナル培養土【YOBS/001】を店頭とネットで販売開始したところ

「この土は何の鉢で使うのが最適ですか?」というような質問がたくさん寄せられました。

灌水頻度/灌水方法/湿度/風量など様々な要因によって最適な鉢は変わってしまうので、今回もまた複雑かつ分かりづらい文章でおすすめの鉢について解説していきたいと思います!

子株

まず子株に関しては何でも良いです

僕は”子株はとにかく速度重視”教の狂信者なので、「まだこの少ない葉数でこの強棘?!」「3号鉢からコンパクトに整った草姿」みたいな評価項目は持っておらず、

オテロイは最低でも6号鉢まではデカくするべきであるという強めの思想に囚われています。

必然的に3号鉢、4号鉢サイズの子株育成においてはベストな鉢に調整することで得られるアドバンテージよりも、

とにかく肥料分をどれだけ効率よく吸収させられるのか、

どこまで同化速度を加速させれるかを重要視しているため、子株用の鉢は本当にマジでなんでもいいです。

ただ一点だけ強くオススメするとしたら、遠藤商事のアルマイト16インチ深型正角バットはガチ

435×435×52mmでプレステラ90だと縦横5列ずつのジャストサイズ

プレステラ120だと縦横4列ずつのジャストサイズ

そして一般的なメタルラックの棚板規格450×900にこのバットが2枚ずつ乗ります

とにかくラックの限界積載まで最高効率で子株を育成したい人はバットを棚板の数×2枚ずつ買って液肥を流し込み、

棚板の端から端まで5万ルクスを切らないようLEDを敷き詰めて、

CO2濃度が1500ppmを切らないような環境制御に努めましょう。

鉢はプレステラでもそれ以外でもなんでもいいです。

中株

さていよいよ5号鉢・6号鉢サイズの中株から完成に向けて株を仕立てていくわけですが、ここからの鉢選びはかなり重要です。

つい3分前まで子株の鉢なんてなんでも良いって言ってたのにいきなり手のひらを返すようですが、今からその理由を1つずつ解説していきます。

毛細根 is 何

まず中株育成で大切なのは毛細根

太根から分岐した細根の先についてる毛みたいな根(微生物)です。根毛とも呼ばれます

太根が主に水分と窒素を吸い上げるのに対し、

細根と毛細根はそれ以外の元素をバランスよく吸収する機能を備えています。

オテロイでも品種によって太根が多い少ないはありますが、太根が多い株ほど葉数が増えるのも株の直径が大きくなっていく速度も速いというのは皆さんも経験からよくご存知ではないでしょうか。

逆に太根より細根が多い包心龍とかホホジロとか穿山甲とかそのあたりの品種はかなり成長遅いですよね。

「葉の展開は速いし大きいけど鋸歯の成長はゆっくり」

「小さいままで動きもないけど展開するごとに鋸歯は確実によくなる」というオテロイの性質は、概ねこの太根の割合によって決定されます。

因果関係を整理すると、

遺伝的に太根の割合が多い→窒素と水に吸収効率が偏る→葉の繊維質は速く大きくなるけど繊維質以外は展開速度に追いつかない

というようなイメージです。

オアハカ現地球の大株をベアルートで輸入して発根後に展開した鋸歯が弱まってしまうという現象もこれと同様に、太根だけが伸びてしまう問題に起因しています。

現地の葉よりも鋸歯が弱くなったオアハカと、しっかりキープできてる個体とを鉢から引き抜いて太根の割合を確認してみてください。鋸歯が弱くなった株は太根ばかりが成長してしまっているはずです。

子株のときはぶっちゃけ水と窒素だけ効率よく吸ってどんどん大きくなってくれたほうが都合いいんですが、5号鉢・6号鉢で鋸歯が繊維質の成長に追いついてないのは大変困りますよね

去年から大量に流通しているSADに関しても、SNSの投稿を見ていて育成者によって鋸歯幅が全然違うという印象が強いのですが

これも偏に窒素と水ばかりを主に吸ってしまった(=太根の割合が多い)のか、それとも17元素の必須栄養素をバランスよく吸収できた(=太根の割合が少ない)のかが一番の要因になっている気がします

※僕自身は50株程度しかSADは育成していないのでn≧100の育成データをお持ちの方がいれば是非dmください

良い鉢の条件

さて、ここまで解説した通り良い根とは太根だけじゃなくて細根・毛細根もしっかり張って土壌内の栄養素をバランスよく吸収できる状態を指します

ここからはその「良い根」を上手く育成できることを「良い鉢」の絶対条件において話を進めます

つまり最終的に株を植えてこんな感じの毛細根が底面にびっちり張ってるならどんな鉢でもそれは「良い鉢」だし、

逆にこうなってないのであればそれは鉢か土かその他の環境なにかしらに問題が発生しているということです。

そして上の動画で使用している土はレシピ公開済みの販売用土【YOBS/001】で、植え込んでいた鉢は兼弥産業の6号スリット鉢

多分スリット鉢の中では一番普及してる超メジャー商品なのでホームセンターで買えます

CSM-180Lっていう深鉢タイプも販売されてて間違い易いのですが動画の鉢は「CSM-180」標準型のほうです

他にも菊鉢・セラアート平鉢・セラアート深鉢・台湾八角鉢で中株と大株(7~12号)の鉢が80株以上あって、全体の2割強は色んな作家さんの陶器鉢を使っているのですが、

僕の育成環境でYOBS/001を使用したケースだとCSM-150、CSM-180が毛細根の割合が最高でした

一般的に「サークリング防止」みたいなアピールポイントを全面に押し出した商品が多いプラ鉢カテゴリにおいて、このスリット鉢はとくにサークリングを防ぐ力が強い商品です。

見て下さいこのクソデカスリットを

ここから無限に土が溢れてくるので僕の部屋は土だらけです。

おかげで部屋の床に水を流せる仕様にするため土間へと改築させられました

このスリットが大きいとなにが起こるかというと、スリットに到達した根がそこで成長を止めます。

空気と光を避けて成長する根に対してのこのクソデカスリットは効果ばつぐん

太根の成長が空気と光でストップしたらその側面から細根→毛細根へと分岐が生まれ、更に主根の根本から新しい太根が発根してまたスリットに向かいながら成長を始めます。

つまり主根の根本から太根が発根

→太根が鉢底のスリットまで到達して成長ストップ

→細根が分岐しながら毛細根が形成される

→並行して新しい太根が発根

という好循環が生まれるわけです。

ではもしこれがスリットがない場合だとどうなるかと言えば、鉢底に到達した太根がそのまま鉢底でグルグル成長し続けます。

根の成長に回されたエネルギーを無限に1本の太根が食い続けてるので細根と毛細根の発達は大幅に遅れることになります。

終わらない負の連鎖、それがサークリングです。

ちなみにクソデカスリットにメッシュテープ等を張ることで土が溢れるのを防ぐという手法が一部のアカウントから情報発信されていますが、メッシュを張って光を遮断すると当たり前のように太根がそのままサークリングします。

クソデカスリットには何も貼らずに使用しましょう。

実験してみたのですがメッシュありだと毛細根の割合はかなり減ります

あと鉢底石を入れた場合も本当に減るし、底面給水はごっそり減るし、もうマジでどうしようもないね!

ちなみにスリット鉢ってなんとなく丸いイメージだけど上から見ると八角形

太根が底について旋回し始めたときに八角形のどこかの角に誘導されてそこから光と空気に触れるように設計されています

それとベアルートで輸入した大株の発根管理にオススメなのはセラアート平鉢

内容量が豆粒みたいに小さくてサークリングが発生したとしてもすぐ土の表面から太根が飛び出してきて認知できる上にとんでもなく浅くて太根発根→太根ストップの回転率が爆速なので、現地球はセラアートで根鉢になるまで毛細根を充実させてから他の鉢に鉢増しするようにしています。

ただスリット鉢と違って側面にはスリットが入ってないので、使用する場合はエキスパンドメタルの棚板の上に並べるのを強く推奨

その場合の用土はYOBS/001をそのまま使うより毛細根を増やすための微生物資材を漉き込んだほうが効率は上がるんだけど硫安とか水分の調整と発酵の理解が僕自身まだ完璧ではないので実験結果がある程度固まったら別の用土(YOBS/002か003)として公開予定です

陶器鉢

草屋よしのぶの店舗では沢山の植物を陶器鉢に植え込んで展示販売を行っている関係で、よくお客様からオススメの陶器鉢について質問されることがあります

僕が思う「オテロイに適した陶器鉢」はこんな感じ

動画を見てもらえば分かる通り太根はサークリングせずに鉢底穴から外にでて止まってます

これもまたスリット鉢同様どこから太根が伸びてきても良い感じに上手く光と空気のある場所まで誘導して太根の成長を止める設計になっており、通気性も高いため鉢内の水分率の調整が楽で生育面でのアドバンテージを持ちます。

しかも”映える”

植物を全く知らないカフェのお客さんが立ち止まって「良い器ね」と興味を示してくれるわけですから、とんでもなく価値のあることです。

プラ鉢よりも重いので屋外に置いて強風で倒される心配もないですし、先にあげたスリット鉢よりもメリットは大きいです。

強いてデメリットをあげるとすれば、液肥とか殺虫剤とか水道水のカルキとか水垢とか、少しでも跡がついてしまうとめちゃくちゃ気になることぐらい。

せっかくのオシャレ鉢なので思う存分映えて欲しいのに通気性の高い陶器の表面に跡が残ってメンテが大変

このデメリットを回避した「根がサークリングしない/水跡がつかない/植え替え時に引き抜きやすい/映える」鉢を1年以上かけてひたすら作家さん達に作ってもらっているのですが未だに納得できるラインまで仕上がってはいません

ただ時間と金がいくらかかっても今後まだまだ試作品は作り続けていくつもりなのでもし興味がある人は気長にお待ち下さい!

本当に良い鉢が作れる自信しかないんだけど、それがいつ出来上がるのかは全く予想できない

大株

大株も!!!鉢はなんでもいいです!!!!

中株での毛細根の拘りはどこにいってしまったんだって感じですけど、逆に言えば6号鉢の段階でバチバチに毛細根まで仕上がった根鉢を崩さずにそのまま7号以上の鉢に植え替えるわけだから

スリット鉢で作った根はそのまま引き継ぎです

もちろん中株で盛大にやらかして根を完全にリセットすることになったりした場合は、輸入ベアルート株の処理と同様にセラアート平鉢で根鉢作ってから植え込むことになるんだけど

そうじゃない限りは鉢は本当になんでもいいです。

7号以上の大株に対して「はやくもっと大きくなって欲しい!」って言いながら液肥の頻度あげていくことはないだろうから排水性とか通気性をそんなに気にする必要もなくて、ただ灌水頻度を開ければいいだけだし

6号鉢の段階でしっかり根を仕上げたならその時点でポテンシャルは十分に可視化されてるはずなので7号になって「今この瞬間からいきなり鋸歯幅でろ!!」みたいな謎の期待感もないでしょう

あと現実的な話をすると大株になると他の中株と同じ棚に乗せた場合にライトからの照射距離が大株だけ異常に狭くなって葉焼けするので消去法的に浅鉢しか選べなくなります。

大株は重量もかなりあるので深鉢に植え込んで重心が上にあるとマジで倒れそうで怖いし

僕の場合はこのブラックポット シャロウの25cmと30cmを買って自分で穴開けまくって使用してます

セラアート平鉢も27cmと30cmの規格があるので、もし屋外に置く場合は底面の安定性も考えてセラアートのほうがオススメです

ブラックポットに穴開けまくる作業も地味に面倒

まとめ

・とにかく子株は爆速成長で、中株はしっかり育成、大株は消化試合

・サークリングは罪

・スリット鉢にメッシュテープは違法改造

以上です!

オリジナル培養土YOBS/001は1パック約3L1,800円(+税)送料着払にてDM販売中なので希望者はTwitterかインスタでDMおねがいします。

※YOBS/002, 003と陶器鉢に関しては試作中のためお問い合わせには回答できません