YOBS/001の使い方を解説してみた

YOBS/001の使い方を解説してみた

こんにちは!よしのぶです

先日の投稿で春夏用のアップデート版としてYOBS/001の仕様変更について告知したところ

たくさんのお問い合わせを頂きましたので今回はYOBS/001の使用に関して

植え替えから管理方法までを詳しく解説していきたいとおもいます!

YOBS/001とは

チタノタ専用のオリジナル培養土です

※オテロイでもランチョタンバーでもケルチョベイその他チタノタと呼ばれがちなアガベの品種全般を指す

特徴はとにかく排水性が高く、毛細根が充実するまでの速度とその毛細根をしっかり生きた状態にキープする性能に長けている点で

この動画の株のようにとにかく根を速く高密度で充実させたい人にオススメの培養土になっています

配合資材は蝦夷砂/日光砂/ゼオライト/竹炭/ようりん/腐植酸/籾殻/微生物資材

この記事の投稿段階では特に土壌化学性と物理性に拘った配合内容だったところから、しっかり土壌生物性までチタノタ用に調整して仕上げたものになります。

土壌生物性とは

簡単に言うと土の中に生きている微生物の多様性を表しています。

液肥によって与えられた養分を植物が吸収できる形まで分解してくれるのが微生物

その分解された養分を植物の根まで運んでくれるのも微生物

毛細根と呼ばれる一見植物の根に見える部分すらも菌根菌という微生物の菌糸なので、

植物にとって有用微生物は必要不可欠な存在です。

YOBS/001では用土を土壌微生物にとって最適な炭素量、pH値、塩基飽和度( 鹿児島県庁「有機栽培圃場の土壌生物性の実態」 )に調節した上で個別に培養された数百種類の微生物を追加投入することで土壌化学性・生物性を両立させています。

なんか小難しい文章になりましたが、簡単にまとめると微生物の増殖に適した土壌環境を化学的に整えた上で有用微生物をたくさん追加投入してるのでよほど極端な変化を与えない限り良好な土壌生物性をキープし易い用土ですよという感じです

YOBS/001の使い方は?

3,4号鉢サイズの子株に関しては3-5割程度の赤玉土を混ぜて、5号鉢以降の中株に対してはストレートで使用することを推奨しています。

ただし、子株の育成環境が高湿度であったりサーキュレーターの風が当たりにくい場所だったり屋外で雨ざらし管理するような場合には3号鉢でも赤玉なしで問題ありません。

自分の育成環境において用土が乾きやすいのか乾きにくいのかもよくわかってない場合は

まずマスキングテープに数字を振って鉢に貼り付け、植え替え直後で乾燥状態の鉢ごと重さを計測した上でたっぷりと灌水して

スプレッドシートに「◯番/◯月◯日時/◯g/乾燥時と現在の重さの差分」のデータを12時間ごとに入力してください

そうすると完全に乾燥した状態の重さ、十分に水分を含んだ重さ、そこから12時間ごとに何gずつ水分が減っていって最終的に何時間で元の乾燥時の重さに戻るのかが鉢ごとに計測できます。

例え同じ棚の同じ段に並べた植物であっても乾燥の速度は全く違います。変化率が3倍違うことなんてざらです

なので棚ごとに全ての株に番号を振ってデータをとることをオススメします

あとは「何番の鉢は灌水から何時間で水分が◯%まで減っているはず」というデータをもとに灌水間隔を個別で調節しましょう

ずっとやっていればそのうち鉢を持った感覚で水分がどの程度残っているのかが把握できるようになるので面倒なのは最初だけです

灌水間隔

さて、どの鉢が灌水から何時間で何%の水分が蒸発したのかを可視化できたとして、

次に立ちはだかるのは「残り水分が何%になったら灌水するべきなのか」という問題です。

答えはもちろんその株次第!

その季節のあなたのその株が、残り水分何%で灌水するのが最適な個体なのかはあなたにしかわかりません。

ただこの記事はYOBS/001の解説記事ですので土に焦点をあてて適正な水分率を述べるなら、基本的には40~50%あたりが一番無難な数字になってきます。

これはどうやって求めた数字なのかと言えばうちで実験した有機物の微生物分解の速度検証からの結果で、

単純に堆肥の発酵速度が水分率4割強の時点で一番速くなったという話ですね

堆肥は一般的に水分と窒素と有機物と微生物を混ぜてからブルーシートを被せて作られますがこれは雨で余計な水分が入ると微生物の活性が失われて上手く発酵が進まないためです。

また空気も必要になるため週に1回程度はブルーシートを外して切り返しを行い再度水分を調整します

※堆肥とYOBS/001の保水性は全く違うのでYOBS/001の場合だと週1の水分調整では梅雨を除いて最大限の効果を得られません

なので鉢植えに関してもとりあえず水分率が2割くらいになったら、少なくとも微生物の活性が低下してることは確かと思って灌水したほうが植物の育成面でも速度的に有利と言えます。

ただし、もう6号鉢とか7号鉢まで育った株でこれ以上大きくなる速度が早まっても場所的に困るしこれ以上棚は増やせないというケースではもちろん育成速度なんて意識する必要は全くありません。

というか僕はオアハカ現地球の6号くらいの株を去年の秋にたくさん買ったので腐葉土とか堆肥を色々使って実験してたんですが、おかげでいま7号鉢と8号鉢への植え替えが本当に大変です。

適正気温から大きくハズレているはずの日本の冬の屋外管理ですら、1シーズンで6号サイズのベアルートが7号や8号サイズまで巨大化します

なんならビカクシダすら屋外越冬のまま2m近くまで巨大化しました

なので、この残り水分が2割程度になったら灌水という方式は成長を速めたい株にだけ適用してください。

成長速度を遅らせたい株に関しては完全に用土が乾燥してから1週間経った後に水やりとかで全く問題ありません。

オススメの鉢は?

この記事に全部解説してるからこれを読んでください

僕個人の育成環境では4号まではプレステラ深鉢

5号からはセラアート平鉢、アップルウェア菊鉢、兼弥産業スリット鉢、台湾八角鉢その他陶器鉢や磁器鉢など色々使い分けてます

結論サークリングが起きなくて内容量が確保できて植え替えのときに引き抜くのが難しくない形状なら本当になんでもいいです

体感として一番サークリングが起きづらいプラ鉢はスリット鉢なんですが、スリット鉢は7号から内容量が跳ね上がるのが本当にきついので7号からは特注でデザイン指定して陶器鉢つくってもらうのが多分最適解だとおもいます。

菊鉢もスリット鉢も6→7号で内容量が倍近くまで上がってその分だけ用土が乾く速度も落ちる、なのに根は増えるから吸水量もあがって形が崩れる、みたいな事故が起こりがち

それと植え込みに際しての質問で多いのが「微塵は抜くべき?」「鉢底石はどこまで?」

微塵は抜かなくていいし鉢底石は1粒もいりません。もちろん微塵だけじゃなく用土までスリット鉢から溢れていきますけどそれは受け皿でカバーしましょう

赤玉細土を追加して腰水管理するようなケースだと鉢底石があったほうが根が痛むリスクが軽減できるのは確かですが、普通に上からジョウロで灌水する場合においては元の通気性がとても高いので鉢底石なしでの使用を推奨しています。

肥料は?

植物に必要な17元素それぞれの単肥を計17種類用意して、それぞれの株に合わせた個別の配合を調整すれば理論上最速育成できるんじゃないかと思って1年くらい実験してましたけど

まぁでも僕1人の時間を1年ちょっと使ったところで大した実験結果なんてあがってるくるわけもなく・・・

ただJAに土壌診断だすと特定の作物に対して個別の栄養素をそれぞれどう調節するのが収量最大化のために必要なのかを教えてくれて、

EC値が足りないとかカルシウムに対してマグネシウムとカリウムの比率が多すぎるみたいな細かすぎる指導が飛んでくる程度には情報の民主化が進んでいるカテゴリにはなりますので、

チタノタに対しても、とにかく葉の繊維質の形成と展開速度を速めるための元素比率と鋸歯の面積比をあげるために要求される栄養素が個別で設定されているらしいということだけは現時点で判明しています。

まずYOBS/001の購入者からの質問で一番多い「結局肥料は何使うのが正解ですか?」に一言で回答するなら、

「4号鉢の序盤まではハイポネックス液肥、そこから先はハイポネックス微粉

これで一旦間違いはありません。とにかくコンパクトさ重視な人は最初から最後までずっと微粉タイプ

もちろん細かく言うと液肥はリン酸多すぎるから腰水すると藻が繁殖するとか、微粉は水溶性じゃない成分が粉として土の表面に残ったのが白カビに見えて鬱陶しいとか

不満点はいくらでも出てくるんですが、チタノタの成長速度についてだけ考えるなら液肥と微粉で完結させてしまっても大丈夫

頻度としては2000倍希釈なら春は通常の水やりのたびにあげても問題ないですし、5号鉢の成長期で週1灌水なら1000倍希釈でもOK

水溶性の肥料分は水やりしたら当然鉢底からどんどん抜けていってしまうので、普段の水やりで常に鉢底から水がばちゃばちゃ溢れるほど灌水してるタイプの人は施肥の頻度が多くても肥料焼けのリスクはほとんどありませんし、

屋外で雨ざらし管理してるような場合は肥料分の流出速度が早すぎるので水溶性の肥料じゃなくてク溶性のタイプ(マグァアンプとか)のほうが持続効果が高いです

とにかく肥料について何がなんだかよくわかんないよって人はハイポネックスを毎回鉢底から溢れるぐらいバシャバシャぶっかけてください

リキダスはあってもなくてもいいです。マグァアンプも、木酢液も、入れたいなら入れて良いけど入れなくても全然大丈夫です。

※リキダスとか木酢液あげるときは水溶液が試験紙で簡単にpHチェックできるので一応見ておくといいかも、長期的に土壌がどの程度酸性に傾いていくのかを実感として把握し易いので

そして肥料完全に理解したっていう人は17元素それぞれの肥料をどの比率と頻度で施肥するのが正解だったかを教えて下さい

僕は現状5種類くらい配合してますけど微量元素の欠乏症まではっきり観察できた株がチタノタだと3品種しかなくて詰んでます

LEDは?

これはどちらかというと実際に店舗に来店された上で用土を購入される方からもらうことが多い質問になりますが、僕が7種類くらいLED使い分けてるせいでそれを直接見た方からは「この用土に合わせたLEDのオススメはあるんですか?」というようなことをよく言われます。

オススメのLED・・・ないです!

ただし絶対にオススメ”しない”LEDの使用方法があって、

それは全てのLEDを同じメーカーの同じシリーズで揃えてしまうことです。

そこまで多いわけではないですが、

「特定の個体が特定の製品と相性悪く全く動かない。

子株で1年動かない。でもLED変えたらメキメキ成長しはじめた

そして元のLEDに戻したらそこから半年で1枚も葉が展開しない」

みたいなことがたまにあります。500-600株くらい育成した中での10株以下の事例なので稀といえば稀です

ただ、2%未満とは言え原因不明の生育不良を改善できる可能性があるのなら十分でしょう

ちなみに大株の中にはそこそこの割合で7種類のLED全てに適合できない株がありました。

まぁ10年近く日光で育ってきた個体をLED環境に移行して「なんか屋外のほうが葉の展開全然速いんだよなぁ・・・」とか言っても植物からしたらそんなんどうしようもないじゃんって話ですけどね

なので草屋ヨシノブの店舗では12号鉢の悪魔が庭に置いてあったりします

また、子株からずっとLED育成してたのに何故か途中からLEDでの成長が止まりがちな品種も稀に存在します

普及種の中では海王もその1つで、これは子株からLED育成してたのに半年で1枚も展開せず上葉のほうまで皺がよっている状態です

自分の株以外でもSNSで海王の大株が全然動かなくなったという報告はあるのでおそらく品種として共通した特徴なんだとおもいます。

外に出した瞬間めちゃくちゃ動きます

2週間で2枚展開しました

この個体の他にも7号鉢の海王を持っていますが完全に同じ状態です

アガベ難しすぎる

まとめ

今回はYOBS/001の使用者に対する説明書的な解説記事でした

また、質問とは少し違うんですが前回パーライト版のYOBS/001を購入してもらった方から「パーライト版でとても気に入ってるから旧パッケージの内容でもう一度オーダーしたい」というような声もあって、

この更新内容に関する記事にも書いた通り籾殻+微生物資材の調整版に移行したことで保水性が下がった(排水性が上がった)点と、それから籾殻が何故か発芽して鉢から稲が生えてきてしまうことがあるという点を不便に感じる方に対して、

当面の間は旧パッケージ版(パーライト入り)も平行してオーダーをお受けする形で対応していきたいとおもいます!

その場合は問い合わせの段階でパーライト版希望と書いてDMもらえますと非常に助かります

※パーライト版に関してはオーダーを受けてから都度新しく配合する形になるため6パック以上からのご注文での対応とさせて頂きます。

それと今後のYOBSシリーズの展開に関する質問で、最初から肥料や堆肥の入っているバージョンで販売できないのかというご要望も数件もらいました

結論からいうと肥料取締法の関係で現状はまだ難しいです(米ぬかですら特殊肥料扱いで届け出が必要)

ただ堆肥に関しては時間かければ自宅でも作れるものですし、僕も自分で堆肥つくってレタス栽培して食べてるので家庭で作る自作レシピについてはそのうち解説記事を出せるとおもいます

また市販の堆肥を使う場合にどれがオススメなのかという質問に関しては基本すべてNGです

例えば籾殻であれば一般的に4-6ヶ月かけてようやく完熟堆肥になるのですが、市販のパッケージに「完熟」と記載された堆肥は全然熟してません。完熟ってただ書いてあるだけ

堆肥を買ったことある人は全員わかるかとおもいますが購入直後に開封するとまだ温かい(発酵途中であって完熟ではない)し、水に溶かすと普通に腐ったドブの臭いがします

統一規格で「完熟」が定義されてないことが全ての元凶なんですが、もしこれを使用して今からの季節で室内の鉢植えにたっぷり灌水した日にはガチで1ヶ月掃除してないハムスターのゲージに敷き詰めた藁みたいな臭いが発生してアガベ引退したくなること間違いなしって感じなので本当に非推奨です。

肥料の吸収効率を上げるための堆肥で部屋が臭くなるぐらいなら、例え吸収効率が落ちたとしてもシンプルに施肥間隔を狭めて力技で液肥を吸わせることを選択する人が大半でしょう

仮に市販の堆肥を使用するにしても、開封後に更に発酵させてから水を含ませても臭いが発生しない状態までもっていってから室内で使うのがオススメです。

そんなわけで今回は以上になります

オリジナル用土YOBS/001については現在400L/月のペースで生産しながら実店舗とTwitterとインスタにて1,800円+税でDM販売中です

生産速度をこれ以上あげるのは僕個人のリソースが足りず難しい状況のため、希望時に在庫がなかったり雨続きだと最大2週間くらいお時間をもらう場合があります

都度DMにて在庫確認してもらえると大変助かります!